ASTER 注目の若手女性作家特集
その作品は、一瞬の流行ではなく、10年後、20年後の美術館のアーカイブに残り得るか。
ASTER Curator Museumの確かな眼差しで選出した、独自の表現を切り拓く3名の若手女性作家をご紹介します。
静けさの奥の物語、キャンバスを越える筆致、そして内なる世界の具現化。
それぞれの「今」と、変わり続ける「これから」を、どうぞご覧ください。
末松 由華利
Yukari Suematsu
ステイトメント/作品コンセプト
末松由華利は、個人や社会が持つ両極性をテーマに活動する作家である。
自身の手記を基に、テーマの選定、タイトルの推敲、そして無数の下絵とドローイングを経て、個人的かつ具体的な体験や疑問を、抽象化・象徴化することで作品を創り出す。取り扱う主題や題材を、この世に生きる誰もが出会う人生の諸局面へと変換し、描出することで、作品を通じた他者との対話を指向している。
ASTER CURATED
静かな絵の中に、物語がある。
末松由華利の作品を見ていると、描かれているものの向こう側に、まだ語られていない物語があるように感じます。
柔らかな色彩と静かな画面。
強く主張するわけではないのに、不思議と目が離れない。
眺めているうちに気持ちが落ち着き、そして少しずつ、自分なりの物語が見えてくる。
そこが、私が末松由華利の作品を好きな理由です。
作品は、その瞬間だけ評価されればいいものではありません。
10年、20年と時間が経ったとき、その作家がどんな場所にいるのか。
私はそこにも興味があります。
末松由華利は、いつか美術館に作品がアーカイブされ、後の時代に残っていく作家になる。
ASTER Curator Museumは、そんな未来を期待して彼女の作品を紹介しています。
作品一覧
新井 碧
Midori Arai
ステイトメント/作品コンセプト
行為・時間を軸とする、体験的時間性を内包する絵画は、鑑賞者に「描く行為」自体を身体的に想像・追体験させる。そしてそれは、個人の時間・身体・主観から、他者・社会について思考したり想像を働かせる手がかりとなり得る。科学と医療が発達し、弱者も生き延びることが可能な共生の時代であるからこそ、生命の有限性について問い続け、また、わたし自身の生きた痕跡を残すため、絵画に時間を閉じ込めていく。
ASTER CURATED
筆の先に、まだ見えない景色がある。
新井碧の作品を見ていると、最初から完成した景色を描こうとしているのではなく、思うままに動く筆の先に、まだ本人にも見えていない景色を探しているように感じます。
重なり、流れ、滲み、そして勢い。
その一つひとつを目で追っていくと、不思議なことに平面であるはずのキャンバスの奥に、もうひとつの空間が見えてくる。
近くで見ると筆の動きに惹かれ、離れて見ると景色が現れる。
そしてまた近づくと、さっきまで見えていなかったものに気づく。
見るほどに感じる、平面にはない奥行き。
そこが、私が新井碧の作品に惹かれる理由です。
そして彼女の魅力は、今ある表現を完成形だと思わせないところにもあります。
これからも新しい表現に挑戦し、そのたびに作品は変化していく。
その先にどんな景色を見せてくれるのか。
ASTER Curator Museumは、進化し続ける新井碧の「これから」を楽しみにしています。
作品一覧
フカミエリ
Eri Fukami
ステイトメント/作品コンセプト
自分と世界における「こころの在りか」をテーマに制作している。人間の意識を作っているのはなんだろうか。とある瞬間に、デジャヴを感じたり。夢の中で何度も繰り返される光景を見たり。「なにか」に出会って感動したり。私達が、意識せずとも。こころが、感情が、記憶が、私よりも正確に「世界の在りか」を教えてくれる。
ASTER CURATED
頭の中にしかない世界を、私たちは見る。
フカミエリの作品には、現実には存在しない景色があります。
それはどこかで見た風景を描いたものではなく、彼女の頭の中にだけ存在していた世界。
人物、色彩、モチーフが組み合わされ、一枚の絵の中に独自の物語と空気が生まれています。
美しさの中に、どこか不穏な気配がある。
明るさの奥に影があり、優しさの隣に危うさがある。
見ているうちに、人間が誰しも持っている「陰と陽」、そして表に見えている姿と、その内側に隠されたものについて考えさせられます。
そこが、私がフカミエリの作品に惹かれる理由です。
そして彼女の世界は、ひとつのスタイルに留まるものではないと思っています。
描き続けることで世界はさらに広がり、表現も変化し、今まで見たことのないフカミエリが現れてくる。
彼女もまた、進化を続ける作家です。
ASTER Curator Museumは、フカミエリの頭の中にこれから生まれる、まだ誰も見たことのない世界を楽しみにしています。