
「迂回しながら絵画へ近づく。」そして「暮らしの中に制作がある」ということ。
展示作家
O JUN / 菊谷達史 / 桜井旭一
今回のタイトルである『「迂回しながら絵画へ近づく。」そして、「暮らしの中に制作があるということ」』という言葉は、はじめO JUNの作品を見た時に思いついたものだ。O JUNの制作態度は、パフォーマンス的であり、絵画制作以外の日常についての言及がふんだんに(隠されて)盛り込まれている。
なかなか適切な言葉がないのだが、日記的、あるいは私小説的といったところだろうか。この二つの、「日記的」あるいは「私小説的」という点は、菊谷達史や桜井旭にも当てはまる。ピッタリそのまま重なるわけではないにしろ、二人とも、記録的であり、日常的で、体験的なのである。そして、それらの出来事は「絵を描く」ということをきっかけにして起きる。
絵を描くことがことの始まりであり、そしてそれはどちらに展開するかわからないプロセスに至り、そして終わりを迎える。絵は全ての場面にあるのだが、そのどこでも主役ではなく、制作中に起きる小さな日常的な、しかし結論もないような出来事を盛り立てる。
まるでシナリオライターのように。絵は強く存在しているのだが、また語られないことの多さも私たちに伝える。さて今回は、O JUN、菊谷達史、桜井旭の3人の新作を含む絵画、ドローイング、映像作品で構成したグループ展によって絵画の豊かな、そして不可思議な面を紹介したい。この3人の作品を通して絵画はまだ十分に面白いものであるということを伝えるために。それを感じていただけたら幸いである。

秋元雄史 Profile
東京藝術大学名誉教授、金沢21 世紀美術館特任館長、国立台南芸術大学栄誉教授、美術評論家。
1955年東京生。東京藝術大学美術学部卒業。1991年から直島のアートプロジェクトに携わる。
2004年~2006年地中美術館館長。2007年~2016年金沢21世紀美術館館長。2015年~2021年東京藝術大学大学美術館館長・教授。2017年~2023 年練馬区立美術館館長。