
高屋永遠 個展 『 象一有と生と無 』
会期
6/7(土)〜6/29(日)
会場
ASTER Curator Museum
石川県金沢市問屋町1丁目99
OPEN 11:00-18:00 休館 / 月曜日・火曜日
入場料|500円 / 学生無料(学生証提示)
作家在廊日
6月7日(土)
6月8日(日)
【個展 象ー有と生と無に寄せて】
いつ、どこに、「それ」が、あるいは「私」が生まれるのかを私たちは知らない—。
意識や知覚の経験としての創作と、顔料を自作することを通して経験する物質の変容は、身体的な認識を伴いながら人間存在と諸事物との関係性を考察するための行為です。その結果として現れる平面上の空間では、言語では表象し得ないであろう、より本来的で普遍的な世界の認識が展開されます。そこに無限に広がりゆく何かを感じることもあれば、一転して、ただただ静寂と無の前に立っているようにも感じられます。
珠洲の大地に足を踏み入れたとき感じとられた「今、この生」という私の認識は、創作のなかで物質の変容とともに、より流動的なものになっていきました。それは、刹那と悠久とが多層的かつ可逆であるかのような時空間の認識の変容へと導くものでした。
この度、作品として結晶化されたその経験たちが、展覧会として鑑賞され、<それ自体>として新たに、あるいは再び生を得ることができたら幸いです。
高屋永遠
高屋永遠が展開してきた複数の試みは、しばしば散逸的であるようにも見受けられる。だが、本個展はそれらが有機的な円環を形成していることをはっきりと示す。
高屋が長らく取り組んできた「青のシリーズ」(《あるいは存在の彼方へ》など)において、少なくともその視覚的な関心としては、タブローのなかで生成される「深み」や「揺らぎ」の探求に照準が絞られていた。パール剤をメディウムとして用いた絵画群(《罔象<満ちる>》など)は、とりわけ「科学」との領域横断的なコラボレーションを通じて、「深み」や「揺らぎ」といったテーマに異なる角度からアプローチを試みたものだ。
パール剤が生み出す独特の視覚効果は、真鍮と顔料を混成した画材を使用した一連の作品(《象-無常 Ⅸ》など)に結実する。これらの作品では、光の入り具合を含む空間のコンディションに応じて地と図の反転が引き起こされる。それは単なる「錯視」的な現象という意味合いだけではなく、「絵画において何が描かれる(べき)ものとされ、何がそうではないのか」という根源的な問いを再考する。
こうしたサイト・スペシフィック性の獲得は地域性(ローカリティ)に対する意識を涵養し、《位相-生》では能登瓦、珠洲で採取された砂、伝統的な珠洲焼で使われる土といったローカルな素材が活用されている(本作の売り上げは、珠洲焼の釜の復興支援に充てられる)。能登半島の震災以来、高屋は東京と石川を定期的に行き来しながら、復興支援と珠洲焼の職人たちとの協働を継続している。この作品のインスピレーションは、その経験から得ている。
そのタイトルに示されているように、多様なメディウムの異種混淆的な混じり合いは物理的・概念的な「位相」という新しい関心を高屋にもたらした。しかし、そうした位相空間的な関心は、すでに「青のシリーズ」でも異なる仕方で探究されていた。こうして、高屋の芸術実践において最初期の試みと最新の試みが——変化をはらみながらも——ひとつの円環構造をつくっていることが明示的になるのだ。
山本浩貴
文化研究者
高屋永遠 | Towa Takaya
1992年東京都生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス校を卒業。流麗な線と神秘的な色彩が特徴的な絵画は、空間、 時間、存在についての領域横断的な考察に基づき制作される。国内外の土地や植物、化粧原料などから自作した色材を用いて作品を制作。繊細な色のスペクトラムの探求と豊かな階調が織りなす独自の奥行きは、鑑賞者を日常から切り離された精神の空間へと誘う。仮想現実上での描画システムの考案や異分野の技術とのコラボレーションを通した作品制作も精力的に行う。2022年より資生堂みらい研究グループとの化粧品原料を用いた共同研究を実施。
<共同研究>
資生堂みらい研究グループとの化粧品原料による美術制作への応用
<主な展覧会>
2025 個展 「無限の形象」 / 銀座三越(東京・日本)
2025 個展 The holographic minds / Lurf Gallery (東京・日本)
2024 第2回日本国際芸術祭 未来を創るU35アート展 / 真言宗泉涌寺派総本山 御寺泉涌寺 舎利殿(京都・日本)
2024 Art Fair Beppu 2024 / 別府国際観光港(大分・日本)
2024 Kiaf SEOUL / COEX(ソウル・韓国)
2024 SUMMER SHOW / Redcar Contemporary Art Gallery(レッドカー・英国)
2024 TOKYO gendai / パシフィコ横浜(神奈川・日本)
2024 個展 It calls : shades of innocence / Lurf MUSEUM(東京・日本)
2023 研究成果展 揺動する絵画空間 / 資生堂グローバルイノベーションセンター(神奈川・日本)
2023 個展 JOY AFTER ALL - 花信風 / Lurf MUSEUM(東京・日本)
2023 Chroma Distance / POLA MUSEUM ANNEX(東京・日本)
2022 diverse paintings / 西武渋谷店(東京・日本)
2019 ART FAIR TOKYO 2019 / 東京国際フォーラム(東京・日本)
2016 ON the THERESHOLD II: Formal Presence / Oriental Museum(ダラム・英国)
<受賞歴など>
2017 ヤングクリエーターズアワード2017 入賞 / MIギャラリー(大阪、日本)
2014 RAW TALENT 2014 Art EXHIBITION 入賞 / Dalston Department Store(ロンドン、英国)
2009 第83回国展 入選 / 国立新美術館(東京、日本)"