具抽象──具象でも抽象でもない、あるいは具象でも抽象でもある

展示作家

江上越/末松由華利/高屋永遠/三浦光雅/南依岐/米山由夏


会期
2025年4月12日(土)〜7月27日(日)


会場
ASTER Curator Museum
石川県金沢市問屋町1丁目99
OPEN 11:00-18:00  休館 / 月曜日・火曜日
入場料|500円(税込) / 学生無料(学生証提示)



「具抽象──具象でも抽象でもない、あるいは具象でも抽象でもある」

一般に学術の世界ではむやみやたらなネオロジズム(neologism)、すなわち新造語の乱発は控えるべきものとされる。それはその通りなのだが、これまでアスターでのキュレーションを通して若い作家たちと接するなかで、いわば「具抽象」という造語でもって形容したくなるような作品に数多く出会った。視覚的には明確な抽象画の背後には、しばしば緻密に練り上げられた具体的なコンセプト──それは、あたかも絵画を成立させる設計図のような機能を果たしている──がある。また、いつも具象画として分類される作品が立脚する土台が意外なほどに抽象的なモチーフであることも多い。本展には、そのような具象と抽象の同時成立や反対に両者の同時欠如について考えるための興味深い作品が並ぶ。当然ながら、こうした事象は歴史的にも発生していたことが推測される。であるならば、本展は美術史の文脈でも真剣に受け止められるべきものなのかもしれない。

山本浩貴

文化研究者


山本 浩貴 Profile

文化研究者。1986年千葉県生まれ。実践女子大学文学部美学美術史学科准教授。一橋大学社会学部卒業後、ロンドン
芸術大学にて修士号・博士号取得。2013~2018年、ロンドン芸術大学トランスナショナルアート研究センター博士研究員。韓国・光州のアジアカルチャーセンター研究員、香港理工大学ポストドクトラルフェロー、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教、金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科芸術学専攻講師を経て、2024年より現職。
著書に『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社 、2019)、『トランスナショナルなアジアにおけるメディアと文化 発散と収束』(共著、ラトガース大学出版、2020)、『レイシズムを考える』(共著、共和国、2021)、『この国(近代日本)の芸術――〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(小田原のどかとの共編著、月曜社、2023) など。現在、①2000年代以降の日本における地域芸術祭、②エスニック・マイノリティの芸術、③現代アートにおけるジェンダーとエコロジーの問題などの調査・研究を行っている。